【イラスト】上手いと言わせる鉛筆デッサンのコツを解説

はじめに

まずは、過去の思い出話を。

自分も昔は、鉛筆デッサンをうまく描くことができなかった。

とはいえ、当時の自分は、絵心に自信があったし、先生も友達もうまいと言ってくれていた。
それなりに美術の成績はよかったし、正直、うまく描けていると思っていた。
鉛筆デッサンも、上手だと思っていた。

しかし、実はそうはなかった。
これが顕在化したのは、絵画教室に通って、専門の先生に評価を受けたことから。
専門の先生は、有名芸大卒だそうで、経験値や能力値が断然高い。

学校以外で、絵をもっと学びたいと思い、絵画教室に通い始めた。
とある日のこと、通っている生徒全員で、静物モチーフの鉛筆デッサンをする機会があった。

当然、描き終わったら、デッサンを並べて、そして先生の評価を受ける。

今回はなかなかうまく描けたので、もしかしたら、良い評価をもらえるのではないかと思って内心ドキドキして期待していた。

しかし、そういう気持ちとは裏腹に期待は裏切られた。

なんと、自分の作品が、一番、悪いデッサン例として評価されたのだ。
「これが一番ダメですね。全然できていない。こういう風に描いてはダメです」

ものすごいショックを受けた。打ちひしがれた。
なんなんだ、この仕打ちは。配慮のない言い方にもほどがあるだろう。

頭を殴られたようなガツンとやられた。目の前が真っ暗になった。多少あった絵心の自信やプライドもはじけ飛んだ。

ああ、もう立ち直れない。

・・・というと、ものすごい大げさかもしれないが、絵心に多少自身のあった当時の自分としては、そういう感じたのだった。

当時を振り返ってみた。これが初めて、上手くなるための起点になる。

うまいデッサンとは

評価が良かったデッサンを観察した。

見栄えはとてもよい、上手だとは思う。

しかし、何がよいのかわからなかった。さっぱりと。

先生の助言は大体決まっている。

「物をよく見て、よく観察して描くことが大切なんだ」
「形がおかしい、よく見たのか」
「面の流れがよくないぞ」
「光の感じがうまく表現できていない」
「メリハリがないね(コントラストが足りない)」
「質感が表現できていないなあ」

先生のアドバイス通り、指摘された点は、意識して描いているつもり。

はやく上手になりたかったので、積極的に先生に手ほどきを受けたが、これ以上のアドバイスはなかった。

今の自分が、当時の自分にアドバイスしてあげたい。

当時の自分を俯瞰してみると、かなりもどかしい。
試行錯誤しているようだが、その方向を探求しても結果はでないよ、とか。
先生の断片的な評価やアドバイスから、いろいろ勘違いしているようだ、とか。

当時試していたこと

全くうまくならないし、わからなすぎるので、デッサンの解説本を購入して読んでみた。
書いてあることは、共感できた。理解したと思っていた。
しかし、振り返ってみれば、理解していなかった。

見よう見まねで、鉛筆デッサンを描きまくった。ある程度、うまくなったような気がする。
絵画教室の先生の評価も、なんとか評価の最下位は、免れるようなった。

そのころ試していたことは、以下の通り。

「ハッチング」
ハッチングを主体としていた。ハッチングとは、グレースケールを表現する手段で、漫画の掛け網表現を思い出してくれるとわかるはず。縦横に線を下記、網目で濃淡を表現する。
また、うまいと評価のあった鉛筆デッサンを真似して、流れがわかる鉛筆の線を描きこんでいた。
ただ、当時、ハッチングが強調され、なにかの模様に見えてしまう点について違和感は感じていた。

「光と影」
ライティングを意識して描いた。光源の方向と影の出る方向等。
一応、当時でも光源による濃淡の方向性は出来ていた。

「パース」
遠近法、透視図のあたりを意識して描く。
1点透視法、2点透視法を見よう見まねで。

「正確な形状把握」
複雑で細かい細部がある形状のものは、まず単純な形してとらえる。
プリミティブな大雑把な形状でとらえた後、細部を描きこんでいく。
個々の形状は、背景パースに沿って配置する。

間違った認識、勘違い

ハッチング

まずは「ハッチング」についての勘違いがあった。

鉛筆デッサンは、グレースケールで描く。
グレースケールを表現するためにハッチング技法を使うのであって、模様を描くことが目的ではない。
ハッチング技法以外にもグレースケールを描く方法はあるのだ。

広い範囲は、鉛筆の腹を利用して面積を広く使っても良いし、一度に塗りつぶせる面積を稼ぐため、鉛筆の芯だけ取り出して芯全体を擦って使う人もいた。(この方が時短も期待できる)
なので、実は、グレースケールを描く技法は自由。表現したい見栄えによって使い分けてもよい。

これに関連するもので、硬度の異なる鉛筆の種類(H・B)をたくさん持つ意味と取り違えていた。
これもグレースケールの濃淡や質感を描き分けるために必要なものである。
しかし、上手な人は、適当な1本の鉛筆があれば、大体描き分けてしまう。

グレースケール(濃度)を描く基本練習もするが、これは、適当にやっても意味はない。
鉛筆デッサンで使う鉛筆を決めたら、その鉛筆で表現できるグレースケールを検証するために描くものだった。

パース

物の形を正確にとらえるという点において、パースの知識が必要になる。これが本質。
いくら観察したところで、納得感のある絵は描けない。

先生のアドバイスは、レベルが低い状態で聞くと、断片的に受け取ることが多いので、そのまま受け取っても全く参考にならない。そのためには、少し座学が必要。遠近法、投影図等は、作図技法として学ぶとよい。

とはいえ、座学は退屈だ。いろいろ試さないと体になじんでこない。

そのため、パースを学ぶには、カメラを趣味にするとよい。望遠、広角レンズでみた絵作りなど、座学を試すには、もってこいだ。高価な一眼レフカメラでもよいが、スマホのカメラでもよい。
現在だと、3Dツールもよい。Blenderなどは、無料で利用できる。

先生のよくあるアドバイスで、「円柱の上面と底面の丸の形は一緒かどうか」を問われることがある。答えは、「上面と底面の丸の形は一緒ではなく異なる」だが、パースの知識がないと答えられない。これは、コップを描く時によく問われること。

質感表現

世の中には、大雑把にわけて、金属、非金属がある。
 金属・・・・・光沢感あり、光沢感なし
 非金属・・・・光沢感あり、光沢感なし、透明度(内部乱反射有)

あとは、表面に塗料がペイントされているもの、布地のように織り目があるものがあるり、質感が異なる。また、光沢感ありの質感で背景が映り込んでいるものも描くことができれば、よりリアリティが出てくる。

ライティング

光の当たり具合によって、シーンの明暗、陰影をグレースケールで描き分けだけのこと。

ただ、自然界のライティングは、結構複雑で、直接光、間接光、反射光等ある。
デッサンの初見者は、容易に理解できる直接光を意識して描くことになるが、それだけではリアリティは表現できない。

このあたりもカメラや3Dツールを趣味にすると、いろいろ学べ、より深く理解することができる。

プリミティブな石膏を使ったライティングで、明暗や陰影を勉強することが多いが、その意味を分かっていないとプリミティブな石膏を描くなんて退屈に感じるだけである。

あとは、カラーとグレースケールの関係もよくしっておくとよい。
赤色、青色、黄色、緑色などをグレースケールに変換したとき、どのようなグレースケールになるか。
同じシーンをカラー写真と白黒写真で比較して確かめるとか。

テクニック

鉛筆デッサンをうまく見せるコツ

コントラストのつける

立体感を表現すると評価が上がる点をみると、立体感は重要。

鉛筆デッサンの失敗作は、全体的にグレースケール濃度にコントラストがあまりつけられていない。
光の当たっている部分、当たっていない部分の濃淡を少し極端にすると見栄えが向上する。

隙間や遮蔽部分のグレースケールの濃淡を濃くする

物と物の接地した部分は、誇張して濃く描くと接地感が増してリアリティがでてくる。
角や隙間などの遮蔽部分もあわせて濃めにしておく。
3D用語で説明するとAmbient Occlusion(アンビエントオクルージョン)表現。

正確な形を写し取る

昔は、鉛筆を被写体にあてて、サイズを計測していたが、今は手持ちの文明の利器を利用する。
まず、スマホのカメラで、シーンの写真を撮る。

写真編集アプリの描画ツールで、パース線を引いてみる。複雑な形状は、プリミティブな形状に置き換えて、輪郭線を上書きしてみる。

また、撮った写真で、画面に格子状の線を引き、写し取るためのサイズ感と余白感を確かめる。鉛筆デッサンしてたキャンバスと比較してみるのもよい。これが正確なら、パースが破綻したデッサンにはなりにくい。

ここで気づくと思うが、眼で見ているシーンとカメラで撮ったシーンの画角が違うことに。
スマホのカメラでは、たくさんの物が画面に納まるように広角レンズが使われていることが多い。
広角レンズの特徴として、中央部と比較して周辺のものほど歪んでいる、奥行が誇張されている。
広角レンズで部屋を撮ると空間が広がっているように見え、実際より広く見えるはずだ。

これは、トレーニングで利用してもよい。

さいごに

鉛筆デッサンもそうだが、自分の経験上、先生に聞いても、デッサンが上手い人に聞いても、疑問に明確、適切に答えてくれる人はいなかった。

苦労話し、マウント撮りたいだけの話、ズレている話を聞いても意味がないのだ。
やはり本質をアドバイスしてくれないと。

なので、試行錯誤しているうちに、ある時、本質やコツをつかんだことに気が付いた。

継続トレーニングしていて、ある時に気づく、「そういうことだったのか。」という、ひらめき、眼からうろこが落ちた時の感覚は、本当にうれしくて、何事にも代えがたい快感があるね。

一旦コツをつかむと、次の段階に進むことは容易になってくる。
また壁に突き当たるが、経験的にそのうち突破できると思うと、試行錯誤中もだいぶ気が楽になる。

あとは、座学をするときの前提把握や読解力の問題もあるかと思ったりする。
経験がないとその用語の前提や本質、意味がわからないこともあり、やはり、初心者だとそのあたりを容易に理解するのは難しいかもしれない。

この段階の事柄を理解するには、この段階の知識や技術を習得しておく必要があり、その積み上げで技術レベルを向上し、理解度を深めていくしかない。

 

以上。